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那須ブラーゼン コラム【第31回】 若杉厚仁社長コラム
 
今回は5回目のL'ETAPE DU TOUR 2019参戦記をお送りします。

 ロープウェイが見えたのち、スキー場とリゾートとして拓かれていることを感じられる村が見えました。
残り距離を確認して、ゴールが近いことも感じ、最後の力、でも決して加速するまではでいたらないような弱々しい力をペダルに込めました。

残り1kmのゲートを通過します。
この1kmはこれまでもこの先も最も、長い1kmであるように感じました。

 そしてゲートが見えてフィニッシュラインに近づきます。
フィニッシュライン付近は斜度が10%を超えていてたくさんのボランティアスタッフがフィニッシャーのサポートしていました。
私は、自然とそのサポートは遠慮したい気持ちになり、スタッフたちが見ていないであろう地点までなんとか進んだところでやっとバイクをおりました。


 やり遂げたんだという思いと同時に情けなさや、他にも言い表せないようなたくさんの感情が一気押し寄せました 涙がこぼれました。
自分が自転車に乗るだけで涙を流すなんて、競技を始めたときには考えたこともありませんでした。
この道程、挑戦に向かった半年の事、スタートラインに立ち、挑戦をし、フィニッシュにたどり着いた自分の境遇のすべてを思い、
そして、その場所の景色を目にしたからだったと思います。
決して目標の順位や記録でもなく、華やかではなく、元プロ選手としてのキャリアを考えれば、到底、まともに走ったとは言えない状況でしたが、
間違いなく、これまでのサイクリスト人生で最高のフィニッシュでした。


 この1日の為だけに集中をして、すべての時間を費やし、でも全く想像も想定もしていない状況に自分自身が置かれた瞬間に、
でも、「今やれることはやる」と自分に言い聞かせ直したことも大きな経験であったと思います。

私は、競技の世界に生きながら、思いを遂げらず競技者として静かに退いたその瞬間から、私自身の中には成仏のできない魂が滞留してしまっていたように感じていました。
その想いと8時間半に渡って、世界最高の舞台で、ゆっくりじっくりと向き合うことができました。
人生おいて最高の糧となる瞬間でした。
 
若杉厚仁
Wakasugi Atsuhito

Profile
1989年10月14日生まれ。千葉県出身。
宇都宮ブリッツェンでプロデビュー。
2013年に那須ブラーゼンに移籍、選手権取締役運営マネージャーに就任。
シーズン末に現役引退。
2016年より那須ブラーゼン運営会社「NASPO㈱」代表取締役社長を務める。