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  宇都宮ブリッツェン コラム【第23回】
 
2019 年のJプロツアー(JPT) が開幕し、すでに6戦が消化された。
開幕から好調の波に乗ったのは、過去にツール・ド・フランスで個人総合4位になったこともあるフランシスコ・マンセボと、2020 東京五輪への出場が期待されるベネズエラの新鋭オールイスアルベルト・アウラールという強力な外国人選手2人を補強したマトリックスパワータグ。
開幕ラウンドとなった修善寺ロードレースDay1をアウラール、Day2をマンセボが連勝すると、続く第2ラウンド第3戦の西日本ロードクラシック広島大会でアウラールが2勝目をマーク。
開幕3連勝でスタートダッシュを決めた。

一方、昨季に4年ぶり3度目となるJPT総合優勝を達成した宇都宮ブリッツェンは、修善寺ロードレースDay1 は鈴木龍の22位が最高位、Day2に至っては全選手がタイムアウトでリタイアと惨敗。
西日本ロードクラシック広島大会で岡篤志が2位となって今季初表彰台を獲得したが、完全に出鼻を挫かれたのはまちがいない状況だった。

そんな中で迎えた、4月28日の第3ラウンド第4戦の東日本ロードクラシック群馬大会。
このレースには、快進撃をけん引したアウラールとマンセボを筆頭に、マトリックスパワータグの主力選手がスペインで開催されるレースに出場する都合もあり未出走。
強力な外国人選手が不在の状況は、ブリッツェンにとっては勝利を義務付けられたも同然の状態だった。

レースは1周回目から3人の逃げ集団が形成され、レース終盤までこの逃げ集団とメイン集団のままのんびりとしたムードで進む。
ブリッツェンとしては序盤から選手を逃げ集団に選手を送り込み、さらに後方から追撃を仕掛けていってレースを厳しい展開に持ち込むことを狙っていただけに、想定外の展開となった。
終盤に入って逃げ集団を吸収した後も、メイン集団ではアタックはかかるも決定的な攻撃とはならず、勝負はゴールスプリントに持ち込まれることになった。
そうなると有利なのが、トラックの中距離競技で日本代表として活躍する選手を多数そろえ、ここ一番のスピードに絶対の自信を持つチームブリヂストンサイクリングで、実際に最終局面では完璧な隊列を組み、万全の態勢でゴールスプリント勝負を迎えることになった。
しかし、その後方から鈴木龍に発射されてスプリントを開始した岡篤志が、写真判定にもつれながらも僅差で先着して優勝。
4戦目にしてようやく、チームに今季JPT 初勝利をもたらした。

負けられないホーム2連戦

今季初勝利の勢いのままに迎えた第4ラウンドは、ホームタウンである栃木県宇都宮市での2連戦。
地元ファンの声援に後押ししてもらいながら、勝利を重ねることが求められた。

しかし、第5戦の宇都宮ロードレースは、レース中盤にアタックのチェックに入った岡がそのまま逃げることになってしまう想定外の展開に。
ブリッツェンは、逃げが吸収された後の攻防戦でこそ主導権を奪い合うレースを見せたが、最終局面にできた5人の先頭集団には長らく日本ナショナルチームの活動でチームを離れていてこの日が今季JPT 初出場となったキャプテン増田成幸が入ったのみ。
最後は数的有利な状況を生かしたチームブリヂストンサイクリングに先行を許し5位でレースを終えた。

ホームレースで連敗は避けたい中で迎えた第6戦宇都宮クリテリウム。
平坦路をハイスピードで駆け抜けるクリテリウムのレース形式で優勝候補の筆頭となるのは、先述した通りチームブリヂストンサイクリング。
戦前の予想通りに大集団のゴールスプリント勝負になることが濃厚となったレース終盤、ブリッツェンはチームブリヂストンサイクリングやシマノレーシング、キナンサイクリングなどのライバルチームと競り合いながら最終周回へ。
最終周回中盤を過ぎると、阿部嵩之が鈴木龍と小野寺玲を引き連れて一気に集団の先頭を奪うと、後を受けた鈴木龍も先頭を譲ることなく最終コーナーをクリア。
万全の状態で発射された小野寺がそのままフィニッシュラインを駆け抜け、前年に続き2連覇となる優勝を飾った。

同時期までに8戦を消化して5勝を挙げていた昨季と比較して、今年は6戦中2勝と勝利数は少ない。
加えて、今季挙げた2勝はどちらも、マトリックスパワータグの強力外国人選手がいない中でのことだ。
そういった意味で今季は、ブリッツェンがディフェンディングチャンピオンとして横綱レースができる環境ではないことが明白になったということだろう。だが、この環境はむしろ歓迎すべきだ。
強敵と競り合い、勝利を収めてこそチーム、選手たちはさらに強くなるからだ。

言わせてもらえば、マトリックスパワータグに開幕ダッシュを決められた3戦、ブリッツェンも増田が日本ナショナルチームで不在だったし、堀孝明も負傷明けで本調子ではなかった。
お互いフルメンバーでレースに臨んだ時、今季の真価が問われることになる。
 

小森信道Komori Nobumichi
スポーツの感動を「コトバ」で読み解き、写真で伝える、編集事務所ハットトリックカンパニー代表。
2011 年より宇都宮ブリッツェンオフィシャルとしてサイクルスポーツの取材を始め、現在では新聞連載やweb メディアにも数多く寄稿するなど活躍の幅を広げている。
サイクルメディアグループ「Porte au Village」メンバー。