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栃木ゴールデンブレーブス コラム【第18回】
 


10月25日、プロ野球ドラフト会議が開かれた。BCリーガーたちが全てかけて目指してきた運命の日。
ブレーブスの選手たちも様々な思いでこの日を迎えた。

 小山ベースボールビレッジの屋内練習場に球団関係者、報道関係者らが集まり、ドラフト会議中継のテレビ画面を前に、祈るような気持ちだった。
1位指名から始まり、2位、3位と時間が過ぎ、指名を待つ4名の選手たちは、談笑したりスマホを見たりしながら別室で朗報を待っていた。
 休憩を挟んで育成枠の指名に入ってまもなく「東京ヤクルトスワローズ、内山太嗣」のアナウンス。
屋内練習場に歓声が響き、辻武史監督が球団代表らと握手を交わして回った。
 「本当によかった。入団当時は20打数1安打と不振な時期もあっだが、努力の成果で調子も上向いていった。
NPBの選手にも負けない力を持っているので、栃木にいる間も練習を積んで、色々と吸収して頑張って欲しい」と、辻監督はホッとした表情でエールを送った。
 そして、指名を受けた内山選手が拍手で迎えられて会見場に登場。
「自分よりも辻監督や周りにいた選手が何より喜んでくれて、遅れて嬉しさがこみ上げてきた。BCリーグでも失敗が多かったので力不足を感じているが、NPBに挑戦するチャンスを頂いたので、1日1日を大切にプレーしていきたい」
と落ち着いた表情で抱負を話した。
 これまでドラフトへの思いを聞くたびに、高校時代の恩師への感謝を口にしていた内山選手。
この日も、恩師への報告のくだりで目が潤んだ。

 後日改めて話を聞くと「指名があった瞬間に監督に電話をして、繋がってすぐに監督が泣いているのが分かった。
本当に喜んでくれて、思い切ってBCリーグにきて良かった。
本気でプロを目指していた中で高校3年の時にケガをして、社会人にいっても試合に出られず、そんな状況でも監督はいつも応援してくれていた。
なんとか恩返ししたいと思っていたので達成できて良かった。
実家には会見後に電話したら、同級生たちが盛り上がっていて母親も浮かれていました」と照れ笑い。
さっそく地元青森のメディアからも取材依頼が来るなど、故郷もこの朗報に大いに沸いていた。

 「師匠」ともいえる八木(健史)コーチに対しては「肩は強かったけどスローイングが安定しないのが課題だったが、その肩の持ち味を生かしながら指導してくれたのが八木さんだった。
周りが(実力不足だと)不安がる中でも八木さんが諦めずに親身に教えてくれた」と信頼できるコーチに恵まれたことが成長の要因だと話した。

 その八木コーチには「お礼の挨拶をして、おめでとうと言ってもらった。
多くを話すことはなかったが、期待してくれていたのはわかっていたので短い言葉でも十分やりとりできたと思う」。
八木コーチは「あくまでも内山が頑張ってた結果」だと多くは語らず後輩の姿を嬉しそうに見ていた。
 ドラフト後も変わらずブレーブスの仲間と練習を続けている内山選手。
今は「秋の時期の練習が始まっていて、ドラフト前からすでにきつかったし、今もきつい。
これからもっと厳しいステージに行く覚悟をしているのでなんとか頑張れているかな。
 新人合同自主トレでは体力面をまず見られるので、今は走りこみとかバット振ったり体幹を鍛えたり。
ハードな練習についていける基礎体力をつけたい。
毎日、もう無理もう無理、といいながらやってます」。

 ドラフト会議が行われた週末に開催されたブレーブスのファン感謝デー。
今季限りでユニフォームを脱いだ村田修一選手とともに注目を集めたのは、やはりNPB 行きが決まった内山選手。

 「ファン感は、まるで卒業式のようだった。ああしてファンのみなさんの前で報告できる場を設けて頂いたので、感謝の気持ちとこれからの意気込みをきちんと伝えることができた。
ブレーブスでは短いシーズンでしたが、たくさんの応援をして頂いた。
今後自分が頑張ることが、来年のブレーブスの選手の道にも繋がると思う。
一番の持ち味がスローイングなので更に磨きをかけて、NPBでも通用するというところを見せたい」。

 チーム創設2年目にして、初のNPB選手が誕生した。チーム全体が喜びムードに包まれる一方で、チーム残留を決めて来季にかける選手、退団して新たな道を進む選手など、みんな必死だ。
どの選手もこれからが本当の勝負。
来季こそブレーブスの優勝を、そして、内山選手が神宮球場でマスクをかぶる日を心待ちにしている。
 
 
 
高村麻代
Takamura Mayo

Profile
NHK各局(津→長野→新潟→宇都宮)で、テレビを中心にキャスター・リポーターを勤める。 フリーアナウンサーとして、CRT栃木放送やFMくらら857でパーソナリティを務めるほか、 ブライダルやイベントのMC、ナレーション、地域誌のコラムなども担当。