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H.C.栃木日光アイスバックスコラム【第29回】
 
9月から10月にかけて霧降アイスアリーナでのホームゲームが続いたH.C. 栃木日光アイスバックス。ホーム開幕シリーズでは昨年チャンピオンのサハリン(ロシア)に苦戦したものの、カード最終戦では同点のままゲームウィニングショットに持ち込むなど成長の跡を見せた。


 その翌週に行われたデミョンキラーホエールズ(韓国)とのシリーズで2勝1敗と勝ち越すなど徐々にホームで力を出し始めたアイスバックスは、10月4日・5日・6日の3連戦で王子イーグルスをホームに迎え撃った。

 今シーズンの下馬評では、一番選手層が厚くて日本チーム最上位になるのは王子だろうという予想がほとんど。しかし、その王子を相手にアイスバックスはこの3連戦でシーズンベストとも言えるパフォーマンスを見せての2勝1敗で勝ち点6。これは今後を見据えても非常に大きな白星だ。
 
 10月4日の対王子第1戦は齋藤哲也のパワープレーゴールを皮切りに6得点のゴールラッシュ。DFから縦方向へ出すパスの速さが赤いユニフォームを混乱に陥れ、齋藤2得点、古橋真来2得点、寺尾裕道とヨーナス・アランネが各1得点。

 翌5日の試合は最終的に敗れこそしたものの、GK井上光明の堅守もあり試合中盤までは1-0のリードをキープするなど王子を相手に一歩も引かない展開。そして3連戦最後の6日のゲームは駆けつけたファンの記憶に長く残るに違いない中身の濃い試合となった。


2点差もなんの。
怒濤の攻勢で王子を逆転!



 10月6日の試合。前日の敗戦を引きずってか序盤は動きが悪く第1ピリオドで2点を献上。さらには味方のペナルティーで第2ピリオドには2人少ないショートハンドのピンチに。このまま王子に押し切られるのか、と誰もが思うなかでDF大津夕聖が「スタンドのみんな、もっと俺たちに力を!」

とばかりに両手を広げてアピール。これがファンと選手の心に火を灯した。


 大声援をバックにこのピンチを無失点で切り抜けると、一転パワープレーからアイスバックスが猛反撃に出る。キャプテン佐藤大翔が放ったシュートのリバウンドを古橋がゴール左から叩いて鮮やかに決めた。「良い時間帯でゴールを奪えて流れを持ってくることができた」と言う古橋の言葉通りに、このゴールでアイスバックスがぐいっとモメンタムを掴むと、さらに第2ピリオド終了間際にはアランネがゴールキーパーの前に浮いたパックを空中で合わせて2-2の同点に追いつく。

 待望の逆転弾は鈴木雄大。今度も佐藤がブルーラインから放った強烈なシュートを鈴木(雄)が空中でディフレクション(方向転換)させるという高い技術力を見せてゴールを奪う。アイスバックスは一気の攻勢で逆転を果たした。

 王子も最後は6人攻撃をかけて必死で追いすがってきたが、アランネが相手のパスをカットして無人のゴールに流し込み、とどめ。4-2とし、鮮やかな逆転劇を見せたアイスバックス。まさにファンと選手が1つになったかのような結束力で、王子から勝ち越しという大きな成果を手にした。

 アリペッカ・シッキネン監督は試合後の会見で「若い選手が多いアイスバックスにとってこういう勝ち方は自信になる。こういう試合をすれば勝てるというのを若手が実感できたのは大きな収穫だ」と納得の表情。

 藤澤悌史コーチも「GK福藤豊を中心によく我慢して守ってくれた。タイトなゲームを勝ち切れたことは成長に繋がる」と選手の頑張りを称えた。

大津夕聖の「熱き想い」が
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そしてなんと言ってもこの試合の立役者はこの若武者だろう。

「悪い流れの中で何かを変えないといけない。中断で静かになっていたこともあり、スタンドと一緒に流れを変えたいと思って、煽って。そうしたらファンのみなさんが付いてきてくれて。自分もその思いに応えなければ、とプレーが一気に変わりましたし、雰囲気も変わった。ファンの方と選手が一丸となって奪い取ったこの勝利は、一生忘れられないと思います」。大津夕聖のこの思いがチームを蘇らせ、奮い立たせたのだ。


この上昇機運を逃すな!
霧降でのハルラ戦に注目



10月には、12月6日~8日の日程で行われる全日本選手権(会場:西東京)の要項も発表されたが、アイスバックスが決勝まで進んだ過去2回はともに王子と対戦して優勝を逃しているだけに、全日本制覇に向けての前哨戦で王子から良い内容で勝てたのは明るい材料だ。

 この号が出る頃の10月19日・20日・22日にはアイスバックスがホーム霧降で韓国の強豪・ハルラと激戦を展開しているはずだ。アジアリーグ優勝候補に対して一歩も引かない戦いぶりをアイスバックスは見せただけに、対ハルラ戦もおおいに期待しよう!
 


関谷智紀
Sekiya Tomoki

Profile
1971年生まれ。埼玉県入間市出身。
スポーツ番組ディレクターを経てライターに転身。
スポーツのみならず経済、IT、フードなどのジャンルで雑誌を中心に記事を執筆。
アイスホッケー取材は2004年から続けている。