【宇都宮市】
こんにちは、本澤建築設計事務所の本澤崇です。
いつも社長通信をご覧いただき、ありがとうございます。
寒さ厳しい季節を乗り越え、やっと春のあたたかさを感じられる日が増えてきましたね。
今回は、本澤建築設計事務所が手掛けてきた「設計」について、その中でも「通所介護施設 デイサービス」の設計について、ご紹介したいと思います。
当社では、今までも多くの介護施設の設計を手掛けてまいりました。
中でも、高齢の利用者さんが日帰りで介護サービスを受ける「通所介護」、つまり「デイサービス」用の施設の設計も、多くご依頼をいただいております。
以前の社長通信でもご紹介しましたが、本澤建築設計事務所では豊郷台にある「みやスマイル」というデイサービスの運営をしております。
※以前の記事はコチラ » 地元の縁がつないだ福祉事業。豊郷台デイサービスセンター「みやスマイル」
実際に施設を運営していることで、事業構造を理解しているのはもちろんのこと、法律上の決まりごとや、利用者さん・働くスタッフにとっての利便性・快適性などを熟知した上で、柔軟なご提案ができることが、多くの事業者様に頼られる理由のようです。
本澤建築設計事務所自身が、デイサービスを運営しているからこそできる提案とは、具体的にはどんなことなのか?
掘り下げてご紹介をしていきたいと思います。
今まで、デイサービス施設設計に関するご依頼には、介護施設とは無関係の建物を再利用するケースが多くありました。(※建物の用途を変更して再利用することを、建築用語で「コンバージョン」と呼んでいます)
実際にご依頼をいただいた、デイサービス施設に変わる前の建物は、カラオケ店や焼肉屋、パチンコ店やイタリアンレストラン、旅館や倉庫など、介護とは無縁の用途で使われていたもので、新築よりコンバージョンのほうが多くありました。
これには理由がありまして、介護事業は大儲けができる事業ではないからです。
介護事業の主な収入源は、国が決めた介護報酬。
その上で、配置するスタッフの数も、利用者さんの数や面積によって、細かく基準が設定されています(※配置基準)
国が定めた介護報酬の中で、人件費なども含めてやり繰りをする必要があるため、大きく利益を出すことが難しい現実があるのです。
そのような前提があるので、イニシャルコストはできるだけ抑えたいと思うのは皆さん同じで、新築より既存の建物のコンバージョンという選択肢が多く選ばれます。
しかし、新築の場合より、コンバージョンの場合のほうが設計に注意が必要です。
介護事業者として、国からの認可を受けて運営をするためには、施設内に必要な諸室などは、全て決まりがあるためです。
新築であれば、基準に沿って0から設計を行えば良いですが、既存の建物の場合は、躯体の構造を全て動かせるわけではありませんし、水廻りの配置なども既存の建物を活かすほうが、コストは抑えられます。
制限のある中で、国の基準を守り、コストも抑えて…となると、当然設計の難易度は新築より上がります。
また、上記を守るだけでなく、利用者さんや働くスタッフにとっての利便性・快適性が高い設計であることも、難しいですがとても大切なことなのです。
当社が運営する「みやスマイル」も、「築130年以上の古民家」の用途を変え、再利用した事例の1つです。
130年以上の民家には、設計図は残っていませんでした。みやスマイルになった古民家のケースだけでなく、古い建物の場合、図面が残っていないことは多々あります。
過去には、古い旅館をデイサービス施設に変更したこともあり、その際も図面は存在しませんでした。
また、図面が存在しても、実際の建物と図面が違っているということもあるので、そこも注意をしなければなりません。
図面がない場合、まず「図面を起こす」ことからはじめます。
寸法を測って平面図にし、骨格や構造が分かるスケルトンを作ります。
そこから、利用者さんが使用するメインの部屋だけでなく、入り口の位置や広さ、事務室や休憩室など、法律の基準に沿って、どうやって部屋を配置するのかを検討していきます。
利用者さんの安全のために「死角」を作らないという点も大切で、構造上撤去することのできない筋交いは残し、壁をなくしてしまうなどの工夫もご提案します。
また利用者さんが雨に濡れずに、送迎車と建物との出入りができるよう「車寄せ」の配置や大きさなども、配慮が必要です。
そして、デイサービスでは「入浴」も大切なサービスですから、水道管の水圧は重要なチェックポイントです。
何ミリの水道管が通っていて、どのくらいの浴槽の容量であれば、どのくらいの時間でお湯が貯まるかを算出します。
水圧が弱いと、サービスの質に影響しますから、タンクを入れるなどの対策が必要になります。
さらには、既存の建物の断熱性能も確認します。いくらイニシャルコストを下げられても、施設の運営がスタートしてからのランニングコストが高すぎるのもよくありません。空調の熱が外に逃げにくくする設計や空調設備もご提案をしています。
また、スタッフの休憩室にも工夫が必要です。
休憩室は周囲の人から見えにくいような閉鎖的な空間は適していません。
介護事業は利用者さんへ平等なサービスをご提供するため、利用者さまからの個人的な心付けなどは辞退している事業者がほとんどです。
ですが、心付けは利用者さんが善意でくださるものなので、スタッフ個人が断りづらく、つい受け取ってしまう可能性もゼロではありません。
受け取ってしまうほうも、利用者さまのお気持ちを尊重してつい…という気持ちになると思うのですが、そういった「つい…」ということが起こらないよう、なるべくスタッフ同士がオープンな環境で働けるような休憩室の配置や設計をしています。
経営者とスタッフ、またはスタッフ同士が、何かを疑い合うような環境はよくありません。クリーンな環境で、お互いが気持ちよく働ける方法を、設計という観点でご提案しているのです。
ちなみに建物の構造上、オープンな場所に休憩室が配置できないこともあります。その場合は、シフトや休憩室の利用ルール作りなど、本澤建築設計事務所が運営する「みやスマイル」の経験をもとに、運用方法などのアドバイスもしています。
その他にも、建物の用途変更をするには、自治体の確認申請なども必要ですし、新築するよりも、気にするべき点が数多くあります。
何より、完成した建物が介護事業の基準に沿わないものであっては絶対にいけませんし、コストがかかり過ぎては、何のために既存の建物を再利用したのか分からなくなってしまいます。
その点でも、既存の建物の用途変更、中でもデイサービス施設への用途変更は難易度の高い設計だと言えるのです。
本澤建築設計事務所では、遠方の事業者様から、現地調査の依頼を受けることもあります。
目星を付けた建物が、デイサービスの施設として用途変更が可能かの確認をさせていただきます。
この用途変更が可能か?というのは、用途変更するのに適しているのか?という観点も含んでいます。
お金をいくらかけても良いのであれば、建築場所の法令さえクリアできていればなんとでもできますし、極端な話、取り壊して新築をしてしまえばいい。
でもそうではないのです。
最初にお話した通り、既存の建物を使うにはイニシャルコストを下げることが目的なので、あまりにもデイサービスへの用途変更が向いていない建物なのであれば、大体の予算感もお伝えした上で、ご検討をいただく必要があります。
その用途変更と予算感の見極めができるのは、やはり多くの事例を経験している当社が強いと自負しています。
前述しましたが、過去には古民家をはじめ、旅館やカラオケ店、パチンコ店、焼き肉屋、イタリアンレストランなど多種多様な用途だった建物を、デイサービス施設へと用途変更をしてきました。
その経験の中で蓄積されたノウハウが、実際の現場調査から設計まで活かすことができています。
さらには自分たちでも、デイサービス「みやスマイル」を運営して15年以上がたっているため、介護事業の当事者として、施設にはどのような配慮が必要か、法令はどのようになっているかなども全て理解した上でのご提案ができるのです。
本澤建築設計事務所が、ご依頼主である介護事業者様に対して行っているのは、単純な設計だけではありません。
既存の建物の用途変更の適正の見極めや、立地のインフラの確認、建物が合法的な建築になっているか、屋根裏・床下の状態の確認、図面の書き起こしなど多岐に渡ります。
さらに介護施設として法令に沿った設計はもちろんのこと、デイサービスを自ら運営してきた経験をもとに利便性・快適性の高い設計をご提案することができます。
また、設計というハード面のご提案だけでなく、サービス開始後の運用面でのアドバイスなども可能なのは、設計事務所でありながらデイサービスも運営するという当社独自の強みでもあります。
このような点で、初めて介護事業へ参入する事業者様へも、多角的なアドバイスができる体制を整えてあります。
また、全国規模などで多数の施設を展開している事業者様であっても、多店舗展開の実績も多い本澤建築設計事務所であれば、ノウハウを活かしたご提案が可能です。
遠方からの現地・建物調査の依頼などもお受けしておりますし、既存物件の選定などのご相談も歓迎しております。
デイサービスの開業をお考えの事業者様は、本澤建築設計事務所へぜひ一度ご相談ください。